ミントの人物伝その84−3〔第807歩〕

周囲はいつも敵だらけでした。
しかし氏康は、関東に着実に地盤を築き上げます。


ミントの人物伝(その84−3)


1568年(永禄11年)、義元没後の今川氏の衰退を受けて、
これを好機とみた武田信玄駿河侵攻を行った。
甲斐の虎が牙をむいたのだ。
これは三国同盟を破棄する行動だった。

武田信玄

氏康は娘婿の今川氏真を支援をする方針を固め、
氏政を駿河に出兵させ、薩多峠にて武田軍と対峙する。

また氏康は、信玄が徳川の不信を買ったことを利用し
徳川との密約を結び、駿河挟撃の構えをとった。

そして北条方の富士信忠
大宮城に攻撃を仕掛けた武田軍を退けたことにより、
信玄は一旦駿河国から軍を退き、甲斐国へと退却した。

北条氏はこののち、東駿河の諸城を奪取したので
氏康と信玄の敵対関係は決定的となった

この結果、氏康は西に武田氏、北に上杉氏、東に里見氏と
3方向を敵勢力に囲まれる状況に陥ったのである。

ーこのままでは危うい、何とかせねばー

この苦境を乗り切るべく
氏康は駿河出兵を決めると同時に、上杉との同盟交渉を開始した。
なんとこれまで永年の宿敵であったはずの上杉と
手を結ぼうというのである。
それまでの方針からの大胆な転換だった。

既にまとまっていた今川家と上杉家の同盟に乗る形で交渉を始め、
1569年(永禄11年)に、
上杉謙信との同盟である越相同盟が結ばれた。

これにより次のことが決定された。

・北条は、謙信を関東管領職であると認める。
・北条は、上野・武蔵北辺一部の上杉氏領有を認める。
・謙信は、氏康の甥である足利義氏古河公方として認める。
・謙信は、北条氏による相模・武蔵大半の領有を認める。

さらに氏康は実子である三郎、後の上杉景虎を上杉の人質にし、
謙信は家臣である柿崎景家の実子・晴家を北条の人質とした。

この越相同盟は、両家の停戦という意味で一定の成功を収めたといえるだろう。


1569年(永禄12年)9月、武田軍が武蔵に侵攻する。
これに対し、鉢形城北条氏邦が、滝山城で氏照が籠城し武田軍を退けたが、
武田軍はそのまま南下、10月1日には小田原城を包囲する。

だが氏康は徹底した籠城戦をとる。
もはや小田原城は、大坂城に匹敵する巨城になっていたし
氏康も簡単に落城されない自信を持っていた。

信玄もまた、10万の上杉謙信でさえ攻め落とせなかった小田原城
てこずるに違いない、と考えていたので
4日後には城下町に火を放ったのち撤退している。


小田原城は、謙信・信玄の強敵二人に対し
籠城戦を戦い抜いた城となった。
これが小田原城は難攻不落である』との過信につながり
やがて後年、北条氏の判断を誤らせることになる。


氏康は1570年(元亀元年)8月頃から中風とみられる病を得ていた。
平癒祈願が行われたが病状は悪化してゆく。

1571年(元亀2年)10月3日、
氏康は小田原城において病没した。
享年57。
民を慈しみ、敵に背を見せることのない生涯だった。

・・・・・・・・・・

その後の北条氏について簡単に述べておこう。

北条氏康の死後は氏政、そして氏直が後を継ぐ。
氏康の死後約20年 北条家は関東を支配し続けた。

だがその間に天下は動き、
日本はほぼ豊臣秀吉に支配されることとなった。

秀吉は北条氏を支配下にしようと考えた。
北条氏は 一族や家臣達の会議で物事を決めていたが、
秀吉に対する和平派と主戦派とで意見が真っ二つに分かれてしまう。
そして結局、主戦派が優勢となったため、秀吉の侵攻を受けることになる。

小田原城での籠城戦で抵抗するが
家臣の裏切りなどもあり、ついに北条氏は降伏する。

氏政は切腹、氏直は流刑となってしまう。
戦国大名としての北条氏は、ここに滅亡することとなった。

難攻不落の巨城を持っていたことが、
氏政や氏直の判断を誤らせたのかもしれない。


(了)


(参考文献)
Wikipedia
北条氏康」永岡慶之助
Web他 
画像はWikipedia、Web から借用いたしました。


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