*ミントの読書歴その26[第133歩・晴]

先日は主人公の年齢のことを書きましたが、
今回の作品の主人公はきちんと年を重ねています。


ミントの読書歴(その26)


京極夏彦(きょうごくなつひこ、1963-)について


百鬼夜行(ひゃっきやこう)シリーズ」


特異な小説である。
基本的にミステリーなのだが、妖怪小説ともいわれる。
現実世界の人間の行動を妖怪になぞらえて描いているのである。
妖怪に対する伝承や、様々な事物・事象の解説が、作品の至るところにちりばめられており
それはそれはくどい程に詳しく述べられている。
だから一種のウンチク小説だとも思う。
本筋以外の記述が長いので、ノベルス単行本が異様にぶ厚いのが特徴。
「レンガ本」、「サイコロ本」とも呼ばれるそうである。
また元々作者がデザイナーだったせいか、本の装丁やカバー絵なども凝っている。
だから書店で見ればすぐに判る。ミントもそれにつられて1995年ごろから読み出した。


姑獲鳥の夏(うぶめのなつ)」(1994年)
魍魎の匣(もうりょうのはこ)」(1995年)
狂骨の夢(きょうこつのゆめ)」(1995年)
鉄鼠の檻(てっそのおり)」(1996年)
「絡新婦の理(じょろうぐものことわり」(1996年)
「塗仏の宴(ぬりぼとけのうたげ)宴の支度」(1998年)
「塗仏の宴(ぬりぼとけのうたげ)宴の始末」(1998年)
百鬼夜行(ひゃっきやこう)ー陰」(1999年)
「百器徒然袋(ひゃっきつれづれぶくろ)ー雨」(1999年)
「今昔続百鬼(こんじゃくぞくひゃっき)ー雲」(2001年)
陰摩羅鬼の瑕(おんもらきのきず)」(2003年)
「百器徒然袋(ひゃっきつれづれぶくろ)ー風」(2004年)
邪魅の雫(じゃみのしずく)」(2006年)


繰り返すが妖怪は出てこない。あくまで人間が主人公のミステリーである。
主人公は2人いる。
憑物落し(つきものおとし)の古書店主、中禅寺秋彦
神の眼を持つ、しかし大いに変な探偵、榎木津礼二郎
この2人が様々な不可思議な事件を解決してゆく。
面白い作品です。


このシリーズ作品の時代背景は昭和20年代、時系列にまとめられている。
また、登場人物たちも、作品ごとに関連付けられていて
独特の京極ワールドを造りあげている。
思えば昭和20年代が妖怪の棲める最後の時代だったのかも知れない。


これ以外にも独特の時代小説や、「どすこい」などのユーモア小説も書いている。
非常に筆が速いが、作品の質は保たれていると思う。


                          その27へ続く  
 

三日月山から見た立花山