*ミントの人物伝その46−2[第322歩]

トーマスは電気や機械の研究が自分に合っていると分かりました。
偉大な発明家が生まれようとしています。


ミントの人物伝(その46−2)

1862年、トーマスは15歳で
ポート・ヒューロンの電信技士になる。
当時の電信技士というのは、より早く正確に電信を打つことで
高い報酬を求めて、あちこち渡り歩くプロの集まりだった。


彼がカナダで働いていたときのこと。
何事もなければ夜間「異常なし」の定時電信を打つのが仕事。
でも退屈だし、どうにも眠くてならない。


ーそうだ、定時に打電する機械を作ればいいんだー


彼は時計と電信機を組み合わせ、1時間おきに打電する機械を作った。
うまく作動するのを確認してひと休み。


あまりに正確な時間に打電されるので、上司が不審に思った。
様子を見に行くと、トーマスがぐっすり寝ている。
上司は怒った。


「起きていなければ、夜間勤務の意味がないだろう!!」


ちなみにこれがトーマスの最初の発明である。


6年間が過ぎた。
電信を打つのが早く正確なトーマスは、優秀な技師として認められ
1868年、21歳で、ボストンのウェスタン・ユニオン電信会社の社員になる。


トーマスはここでもトラブルを起こし、閑職に配置換えされてしまう。
だが彼はくさらなかった。
仕事の合間にファラデーの本を読んだり
ボストンの工場を見学しているうちに、気づいたことがあった。


ー現在、電気は電信にしか使っていない。他のことにも利用できないだろうか。
 もしいろんな機械に利用できれば、世の中がもっと便利になるかもしれないー


以降トーマスは、自分の実験結果をよく検証したり、ノートに書き留めたり
するようになった。


この年、トーマスは最初の特許を申請する。
米国議会のために作ったもので、自動電気式投票記録機である。
これは、賛成・反対の投票結果がたちどころに判明するというものだった。
トーマスは自信があったのだが・・


政府はこれを採用しなかった。
たとえば「牛歩戦術」というものがある。
主に少数野党が、投票にわざと時間をかけることによって
議決を先延ばししようとする戦術だ。
こんな戦術があるくらいだから
投票結果が早く分かれば良い、という単純なものではなかったのだ。


トーマスは反省した。
ーいくら立派な発明でも、人々が喜んでくれなければ意味はないー


このことは彼にとって貴重な教訓となった。


(続く)


(参考文献)
「世界を変えた科学者エディソン」スティーブ・パーカー<岩波書店
 写真はWikipediaから借用しました。


***最近読んだ本***


「中原の虹(ちゅうげんのにじ)1〜4」(浅田次郎
蒼穹の昴」・「珍妃の井戸」の続編である。
この作品の主人公は張作霖だろう。馬賊の実態がよく捉えられている、と思った。
それと女真族の中国征服については、司馬遼太郎の「韃靼疾風録」を読んで以来
関心を持っていたので、この作品も面白く読めた。
作者は、評判の悪い西大后・袁世凱でさえ、生来の悪人とはしていない。
優しい目で見た歴史冒険小説といったところだろうか。



[平成23年の記録]
 http://d.hatena.ne.jp/mint0606/20111231


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