*ミントの人物伝その61[第440歩]

人物伝は久しぶりです。山歩きレポも書きたいのですが。


ミントの人物伝(その61)


李靖(りせい、571-649)
中国唐代に太宗に仕えた軍人・政治家。


571年、長安の近郊で生まれる。
隋の高官の一族の出身である。
若いころから体格も良く、兵法書をよく研究していた。


隋も二代目煬帝(ようだい)の代になると、
高句麗遠征の失敗以降は天下が乱れ
各地で叛乱が起きるようになった。


李靖はこのころ馬邑県の副長官だったが
上司にあたる李淵(りえん)に謀反の動きがあることをつかむと
江都に巡遊中の煬帝に直接知らせに行こうとした。


だが長安で計画は露見して李淵の下に引き出された。


「おのれ、わしのことを密告しようとは憎いやつだ」


すぐさま処刑しようとする李淵に対して李靖は言った。


「貴公は挙兵して天下のために暴虐を除いて民を安らげ
大事を成し遂げようとしているはず。
なんのために私怨によって壮士を殺すのか」


このとき傍らにいた李淵の次男、李世民(りせいみん、のちの太宗)
これを聞き、感心して思った。
−この男は使えるかもしれないー


李世民は父に李靖の助命を嘆願して、以後配下に加えた。


李靖は李世民の強力な幕僚として付き従い、
隋が崩壊した後の統一戦争において様々な献策を行った。


王世充(おうせいじゅう)との戦いで武功を挙げたことで
李靖の武将としての名声は高まった。
江陵の蕭銑(しょうせん)との戦いでは全権を任されるほどであった。


李靖の戦術の基本は、騎兵の機動力を活かした奇襲戦法であった。
敵を意外な方角から攻め込み混乱させ、敵が逃げる方向を予測して
伏兵を置き、挟撃して殲滅(せんめつ)するという戦法である。
これにより、味方の兵が敵より少ない場合でも常に勝利を収めたという。


618年、李淵は唐を建国。初代皇帝(高祖)となる。
626年、李世民が帝位を継ぎ太宗となる。
629年、太宗は唐の北辺を脅かす突厥(とっけつ)に対抗するために
李靖を派遣した。


突厥頡利可汗(けつりかかん)は李靖の英名を知っていたので
その突然の出現に色を失い、陣を捨ててあわてて撤退した。
多くの領土を放棄して奥地へ引き込んだあと
さらに長安に使者を送って、唐に恭順を誓う姿勢を示した。


一方李靖は、降伏を受け入れるかのように見せかけながら軍備を整えると、
攻撃をためらう同僚を説得した。


「今こそ進撃する絶好の機会である。戦機をのがすな」


騎兵1万に20日分の食料を持たせただけで、突厥の本拠地に向かって出撃した。


和平交渉中と油断していた突厥軍は破られ、頡利可汗たちは捕らえられてしまう。
突厥は滅亡し、以降の数十年間は唐の北部国境で戦争が絶えることとなる。


634年、今度は唐西部の異民族、吐谷渾(とよくこん)が唐に背き攻め込んできた。


太宗は李靖を当代一の戦上手と考えていたが、65歳と老齢であるので
当初は別の将軍を任用しようと思っていた。
だが替えるべき人材がいない。


「やはり李靖にまかせよう」


かくして李靖は吐谷渾討伐へと赴き、
数万の兵を率いて五箇所から同時に侵攻した。


吐谷渾軍は李靖を警戒して撤退し、草地を焼き払って
馬の飼料をなくす焦土戦術を取った。


部下の諸将はこれを見て、行軍の難しさを李靖に訴えた。


「次の年に草が生えるのを待ってから再度進撃しましょう」


しかし李靖は言った。


「草が生え代わるのは遊牧民の吐谷渾軍にとっても有利なのだ。
勝機があるのは敵軍が敗走している今しかない」


全軍は餓えに苦しみながらも進撃し、ついに翌年、吐谷渾を服属させた。


李靖は国内統一戦では長江以南の制圧に成功し
統一後は唐の北方・西方の不安を取り除いている。
しかし決して「武」だけの人ではなかった。
彼は宰相にも任じられ立派にその職を果たしている。
文武に優れた名将だったといえるだろう。


649年、李靖は79歳で死去する。
過去の武功におごることなく、寡黙で控えめであった彼は
陰謀渦巻く政界にあっても、元老として天寿を全うしたのだ。


晩年に至るまで、太宗の李靖に対する絶大な信頼は
微塵も揺るがなかった。


李靖と太宗の兵法書『李衛公門対(りえいこうもんたい』は孫子』『呉子』などと並ぶ兵法七書に選ばれているという。


(参考文献)
「中国武将列伝」(守谷洋)
  Wikipedia 、他
  写真は Wikipedia から借用しました。



***最近読んだ本***


テンペスト」(池上永一
確か数年前にテレビ放映された作品だと思うが、
見てないので読むまで内容は知らなかった。
幕末から明治初期にかけての琉球を舞台としていて
奇想天外な内容ながら、ユーモアもあふれる作品だ。
若い女性を上手に描いていると思う。
興味深く読んだ。




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