ミントの人物伝その70−3〔第612歩〕


北軍の反撃が始まります。
近代的総力戦と呼ぶべき徹底的なもので
そのため南部は焦土と化しました。


ミントの人物伝(その70−3)


1863年7月のゲティスバーグの戦いで北軍が勝利する。

南北戦争を通じて最大の戦闘であり
3日間での死傷者は、両軍合わせて5万人近くにもなった。
被った損害は両軍とも同程度だったが、
兵力数に劣る南軍にとって死傷者2万3千は実質的な敗北だった。

ゲティスバーグの戦い

このときリーにはいつもの作戦の冴えが見られなかった。
じつは彼の右腕だったジャクソンがこの直前に戦死していたのだ。
ジャクソンはストーンウォール(石の壁)という渾名がある将軍だったが
リーの有能な部下であり、かけがえのない友でもあった。

−ジャクソンは地図を指して見せただけで、私の真意をすべて読み取ることができた。
だが彼はもういないのだ・・−

リーは改めて、ジャクソンの戦死がいかに痛手であったかを感じるのだった。

トーマス・ジャクソン

リーは敗戦の後、デーヴィス大統領に辞任を申し出たが
デーヴィスはこれを却下している。
北軍に対抗できる将軍が他にいなかったのだ。

一方北軍で、1864年グラントが合衆国陸軍総司令官に就任すると、
北軍の物量的優位性を活かした戦略をとるようになった。

ユリシーズ・グラント

こうなるとリーも防戦一方とならざるを得ず
6月にはリッチモンドの近郊まで後退を強いられた。


一方、西部からは北軍シャーマンが進軍を開始し
9月にジョージア州アトランタを陥落させ
占領後、同町を焼き払い
11月には「海への進軍」と呼ばれるジョージア州サバナへの進撃作戦を開始する。
かくしてジョージア州の最も肥沃な地帯は焦土と化し、
鉄道や通信などのインフラ設備はことごとく破壊された。

ウィリアム・シャーマン


1865年1月31日、リーは南部議会によって南部陸軍総司令官に任命されたが、
もはや南部連合の勢力が挽回することはなく、
4月3日にはリッチモンドが陥落する。

リーはリッチモンドを脱出、ジョゼフ・ジョンストン軍との合流を計ったが
バージニア州アポマトックスで北軍に捕捉され、ついに
4月9日、グラントに降伏する。

ここに足かけ5年にわたる南北戦争終結した。

南北戦争は、機関銃の登場や軍用電信の利用、鉄道による大量の移送など
総力戦の先駆けとなったものだった。
南北戦争の計62万という死者の数は
第1次大戦の約11万、第2次大戦の約30万と比べても突出している。

まして当時の北部南部の人口は3100万人だ。
いかに激しい戦争であったかが分かる。

南北戦争が北部の勝利で終結し、国家の経済基盤が北部中心に移ったことにより
戦争前から始まっていたアメリカの産業革命がさらに進展することとなった。
なお最大の争点であった黒人奴隷制度は廃止されたが
これは新たな差別問題発生の起点ともなった。

様々な意味で
南北戦争はのちのアメリカの歴史に大きな影響を与えたのである。


戦後間もなく衝撃的なニュースが飛び込んできた。
4月15日、リンカーンが暗殺されたのである。
リーの胸に去来する思いは何だっただろうか。

リーは市民権をはく奪されていたが、恩赦により
同年10月、バージニア州ワシントン大学学長に就く。

−荒れ果てた南部を復興させなければ。そのためには人を育てることが大事だ−

ようやくリーに教育者としての平穏な日々が戻ってきた。
かつての南軍の英雄は、変わらず人々に尊敬され続けたという。

勝者である北軍のグラントがのちに大統領となるも汚職問題で晩節を汚し、
同じく北軍のシャーマンが戦時に行った焦土作戦や無差別攻撃のために
永く嫌われ続けたことを考えると対照的である。


1870年、ロバート・エドワード・リー死去。享年63歳。


1975年にフォード大統領の承諾と米国議会によって
リーは米国市民権を回復する。
彼の死からじつに105年後のことであった。



(参考文献)
Wikipedia 、他
「世界の英雄がよくわかる本」(寺沢精哲)
画像はWikipedia から借用いたしました。



[平成26年の記録]
 http://d.hatena.ne.jp/mint0606/20141231


[平成25年の記録]
 http://d.hatena.ne.jp/mint0606/20131231


[平成24年の記録]
 http://d.hatena.ne.jp/mint0606/20121230


[平成23年の記録]
 http://d.hatena.ne.jp/mint0606/20111231


[平成22年の記録]
 http://d.hatena.ne.jp/mint0606/20111230


[人物伝]
 http://d.hatena.ne.jp/mint0606/20140930


コメントは、ブログ運営者(ミント)が確認後に公開されますので
よろしくお願いします。