ミントの人物伝その85−2〔第811歩〕

彼は人々に野生動物がいかにすばらしい生き物であるかを
伝えたいと思いました。
そしてあの「動物記」が生まれました。


ミントの人物伝(その85−2)

シートンニューメキシコで狼退治をしたときの体験は
彼の著作「狼王ロボ」にて知ることが出来る。
そのあらすじは次の通り。

シートン動物記


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カナダの博物学者、シートンのもとにある日一通の手紙が届く。
送り主はアメリカで実業家として成功し、牧場経営をしている知人だった。

手紙を読むと、彼が経営している牧場がある地域では、
近年家畜が狼に補食される事件が多発しており、
動物の生態に関して豊富な知識を持つシートンの助けを借りたいのだという。

本来なら狼狩りを専門に行うウルフハンターに依頼するはずが、
なぜ自分に助けを求めるのか、という疑問を抱きながらも、
シートンは牧場があるニューメキシコへと向かった。

ニューメキシコの一地区カランポーに到着したシートンは、
現地の人々から「魔物」と呼ばれ恐れられる狼、ロボの存在を知らされる。

ロボはがっしりとした巨躯の狼で、
自分の倍以上もある体重の牛を引きずり倒す体力と
「悪魔が知恵を授けた」とさえ称される知性を持ち合わせていた。

今までも何人もの牧場主やハンターたちがロボに挑んだが、
武器を持った人間の前には決して姿をさらさず、トラバサミや毒の餌、
待ち伏せなどの罠・策は全て看破されて徒労に終わり、
何百頭もの家畜や猟犬が補食されたという。

人間を翻弄し続けるロボに万策尽きたカランポーの人々は、
今まで数々の狼の群れを退治してきたシートンに白羽の矢を立てたのだ。

依頼を受けたシートンはロボの群れの追跡を開始した。
ロボも含めて6頭ほどの小さな群れでありながら、
群れを構成する狼たちはいずれも普通の狼より大きく
強力な精鋭ぞろいである。

そして整然とした統率に裏付けされた鮮やかな狩りを見せる
ロボの驚異的な賢さにシートンは驚嘆するのだった。

シートンは有らん限りの知恵を絞りロボを捕らえようとするが、
いかなる巧妙な仕掛けも通用せず、ロボたちは人間をあざ笑うかのように
罠をかいくぐっていった。

そして追跡開始から3ヶ月が経った頃、
シートンはロボの群れの足跡を見てあることに気付く。

それは、特定の一頭にのみ、厳格なロボが例外的に寛容な態度を取っている
というものだった。

シートンはその特徴から、足跡の主はロボの群れにいる唯一の雌であり
真っ白な毛色を持つブランカと呼ばれる狼のものと断定する。
ロボにとってブランカは妻と言える特別な存在だったのだ。

これがロボの唯一の弱点と悟ったシートンは、捕獲の対象をブランカへと変更する。
間もなくブランカは罠にかかり絞殺される。

妻であるブランカを奪われたロボは冷静さを失い、
ついにシートンが仕掛けたブランカの匂いが付いた罠に捕らわれる。

ブランカを殺され、鎖に繋がれたロボはかつての荒々しさを無くし、
与えられた食べ物や水を一切口にしないまま餓死する。

あくまでも人間に屈服しないロボの最期を見たシートンは、
その野生の中にある気高さに敬服すると同時に、
誇り高き狼王に対する自身の卑劣を恥じるのだった。

              −Wikipedia「狼王ロボ」より抜粋ー

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狼ロボを捕獲し終えると
シートン自身も自戒し、今後は意味のない狩りは控えようと決心した。


このあとシートンはフランスに渡るが、その船で美しい娘と出会う。

1895年、アメリカに戻った時にこのグレース・ギャラトンと結婚。
翌年、ニューヨークで生活を始める。

だがアメリカの国籍をとることはなかった。
シートンアメリカの大自然や動物を愛してはいたが、
ほとんどのアメリカ白人はそうではない、と思っていたのである。

実際、開拓者である白人は自然を大事にすることはなかったし
野生動物や先住民を平気で殺していた。

ーロボたちが家畜を襲っていたのは、獲物のバッファローがいなくなったためだ。
そしてバッファローがいなくなったのは、ほかならぬ白人が原因なのだー

白人が入植する前の北米大陸には、約6千万頭のバッファローアメリカバイソン)が
棲息していた。
ところが乱獲のため今や千頭もいないという。
害獣として駆除された面もあるが、先住民を飢えさせるため、
あるいは娯楽としてのハンティングが主な原因とされる。

バッファローアメリカバイソン)


1898年、シートンはそれまでの数年間、雑誌に発表した物語のうち8編を集め、
第一作品集『私の知る野生動物 ( Wild Animals I Have Known )』を刊行、
ベストセラーとなる。

1.ロボ - カランポーの王 ( Lobo, the King of Currumpaw )
2.銀の星 - あるカラスの話 ( Silverspot, the Story of a Crow )
3.ギザ耳坊や - 綿尾ウサギの話 ( Raggylug, the Story of a Cottontail Rabbit )
4.ビンゴ - 私の犬の話 ( Bingo, the Story of My Dog )
5.スプリングフィールドの狐 ( The Springfield Fox )
6.だく足のマスタング ( The Pacing Mustang )
7.ワリー - 孤犬の話 ( Wully, the Story of a Yaller Dog )
8.赤襟巻 - ドン渓谷のウズラの話 ( Redruff, the Story of the Don Valley Partridge )

これらの作品は全て、自身の体験や見聞をもとに作られており
ノンフィクション小説といっても差し支えのないものだ。
だから邦訳も「動物記」ではなく、「動物物語」とするのがむしろ正しいといえる。

作品は大好評だったが、なかには彼のことを嘘つきで、
書いている内容はでたらめだ、と悪口をいう人間もいた。

シートン自身も、本当は博物学者をめざしていたのだから
きちんとした「動物学」の書物を著したい、と考えていた。

だがこれ以降、シートンの名前は全米で有名になり、
講演などで多忙になってしまったため、その実現はずっと先の話になるのである。


(続く)


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