ミントの人物伝87①〔第852歩〕

久しぶりの人物伝です。

これは船旅を大きく変えた男の話です。

 

*ミントの人物伝87 ①


<ジョン・ハリソン(John Harrison)(1693-1776)、

イギリスの時計職人>                       f:id:mint0606:20190219203356j:plain

 

ジョンは、イギリスのヨークシャー州フォールビーで

大工の息子として生まれた。

 6歳の時、天然痘にかかって静養していたときに、時計の動きに

心をひかれた。

彼はしだいに時計作りに興味をもつようになった。

 父親の仕事を手伝いながら、独学で物理学や機械工学を学び

時計の仕組みを理解していった。

 

ジョンが20歳の時、大工仕事の合間に自力で時計を製作する。

木製の箱型置時計だ。

その時計は正確だったので近所の話題となり、時計の注文や修理の依頼が

相次ぐようになる。

こうして彼は、いつしか時計の仕事だけで生計が立てられるように

なった。

 

ところでこの頃、海難事故が相次いでいた。

 1707年、イギリス海軍軍艦4隻が岩礁に衝突沈没し、乗組員2千人が

亡くなる大事故が起きる。 

1714年、イギリス議会は「経度法」を交付、

経度を測定する方法を発見したものには2万ポンドを与える、

と決定した。

 

ジョンはこのことを聞いて思った。

ーよし、この2万ポンドをいただこう。すごい名誉にもなるぞー

 

じつはそれまで何百年もの間、船はどこに行くにも、

なんと現在地がわからないままに航行していた。

コロンブスやマゼランも航海中、その場所の緯度は北極星の観測で

わかっていたが、経度はわからなかった。

自分の現在地がわからないのでは、座礁などの事故が頻発するのは

当然だった。

 

1時間が経度15度に相当することはそれまでにわかっていた。

ある船が母港から見て西の洋上にあり、その地点の時刻が12時(正午)

だとする。

このとき母港の時刻が14時であれば、その船は30度西にいるということに

なる。

だから当時の科学者たちも船乗りたちも、船の現在位置を知るためには

母国の時刻を知ることが何よりも重要だ、と認識していたのである。

 

船の現地時刻は太陽と星でわかる。

だが航海中に母港の時刻を知るにはどうしたらいいのだろうか?

 

そう、「海洋上でも正確な時計」があればいいのだ。

 

だが、しけに耐え、季節や気温の変化にも耐える時計など

この時代には存在しなかった。

1700年代の携帯時計はまだ精度が低く、おまけに値段も高かった。

携帯時計より置き時計のほうが正確ではあったが

当時の置き時計は振り子方式だったため、揺れ(ゆれ)に弱い。

航海中の船の揺れが激しいことを考えれば

到底実用には適さないだろう。

 

ジョンは、

「丈夫でかつ海上でも正確な時計」を作ろうと決心した。

  

さて時計の心臓部分のひとつが「脱進機」である。

 

*「脱進機」とは、等時性を持つ振り子や*テンプの振動を利用して

歯車が一定スピードで正確に回転するように変えるしくみである。

動力ぜんまいがほどける力によって回る歯車「がんぎ車」と、

振り子やテンプと連動して、往復運動による規則正しい振動で

がんぎ車の歯を一つずつ正確に進める「アンクル」とで構成されている。

セイコー博物館HPよりー

〔*振り子の仕組みを小さくして持ち運びができるようにしたものが

 テンプである〕

 

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この脱進機の改良が何よりも重要と考えたジョンは、試行錯誤の末

1722年頃、ジョンは摩擦や振動に強いグラスホッパー脱進機を

考案する。

グラスホッパー脱進機>

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これで新しい時計を作る目途が立った、とジョンは思った。

  

(続く)

 

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