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彼の業績は非常に幅広いです。
初期は化学でしたが、その後は生物学、医学の分野へと
変遷してゆきました。
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*ミントの人物伝91 ①
ルイ・パスツール(1822-1895)
フランスの生化学者・細菌学者
ルイ・パスツールはフランス東南部のドールで皮職人の
息子として生まれた。
中学校に進学したころからさかんに絵を描くようになる。
集中力はあるが成績は普通だったらしい。
1843年にパリの高等師範学校に入学して化学を専攻し、
翌年から1847年まで酒石酸の研究・実験をする。
当時、酒石酸とラセミ酸(バラ酒石酸)との相違点を見つけることが
科学者の中で目標となっていた。
ドイツのミッチェルリッヒは
この二つの塩の結晶はまったく同じ元素で、同じ形で成り立っている
とすでに明らかにしていた。
ところが酒石酸は偏光を右に回すのに対し、ラセミ酸は不活性の酸で
偏光を打ち消してしまう。
なぜなのか?学者たちにとっての謎だった。
1848年、パスツールは顕微鏡で熱心に観察した結果、
ラセミ酸は左右対称の二つの結晶から成り立っており、
そのため偏光に対する作用を打ち消しあっているのだ、と看破する。
ラセミ酸のデキストロ体とレボ体
1848年5月22日、パリの科学アカデミーに研究論文を提出。
結晶学の学者ビオーがこれを認めたため、パスツールの成果として
評価され、またこの研究は、結晶の形を立体的に分析する「立体化学」の
さきがけとなった。
パスツールはこの論文により、ストラスブール大学の化学の教授の
地位を得た。
1857年には高等師範学校の事務局長兼理学部長となった。
ここで彼の助力を待っていたのは、ブドウ酒やビールの醸造業者だった。
ワイン製造業者から「作ったワインが酸っぱくなる原因を調べてほしい」
という依頼を受ける。
なにしろ当時は、ブドウのしぼり汁をブドウ酒にさせるのも、
大麦をビールに変えるのも、すべて化学反応であるとされていた。
酵母とよばれる微生物のしわざである、などとは知られていなかった
のである。
ビールの酵母
だがついにパスツールは研究の末に
アルコール発酵が酵母菌の働きによること、
ワインをだめにする酢酸発酵は、酵母菌とは別の微生物(細菌)の
働きによること、を確認した。
発酵が微生物の働きであることを発見したのは彼の功績である。
ワイン業者に対しては有害な微生物が混入しないよう
工場の環境を整え、また大桶が汚れるのを防ぐように忠告した。
これによりワインの生産量が増えてゆく。
パスツールは考えた。
ー微生物を殺すことができたら食品は長期間保存できるはずだ、
いい方法はないだろうかー
1860年代に、パスツールは低温殺菌法(パスチャライゼーション)を
開発する。
これはワインやビールを57℃以上で数十分間加熱し、
有害な微生物を殺菌(熱消毒)する方法であり、現在も実施されている
非常に画期的なものだった。
これによりワインやビールはずっと長い間、よい品質を保つことが
できるようになった。
ワインはフランスの重要な生産品だったので、国に対して大きな
貢献ができたことをパスツールは喜んだ。
微生物の研究を通じて、パスツールが考えていたことがあった。
ーはたして生物は自然に生まれるものだろうか?ー
当時考えられていた学説は
「条件が整えば、生命は単純な無生物から生まれることもある」
とする自然発生説だった。
実際、肉にウジが発生したり、穀物に虫がわいたりするのは
自然発生によるものではないか、というわけである。
この学説にパスツールは疑問をいだいたのだ。
彼は白鳥のフラスコを用いて実験した結果、
一、熱消毒をしたスープであっても、空気中に放置していれば微生物が
発生するが、それは空気中の微生物がついたゴミによるものである。
二、ゴミが空気中に入らぬように遮断すれば、スープに微生物は発生しない。
この実験結果をふまえ
1864年4月7日、パスツールはパリ大学で自然発生説に反論をした。
「わたしはこのスープを、人間が作りだせないただ一つのもの
つまり『空気中の細菌』から遠ざけておいたのです」
(続く)
[平成30年の記録]
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[平成22年の記録]
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[人物伝]
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