*ミントの読書歴その9[第106歩・晴]

あの元横綱チンギス・ハーン肖像画に似ています。


読書歴(その9)


高校時代に読んで印象に残った作品です。


井上靖(いのうえやすし、1907-1991)は色々な小説を書いたが
ミントが読んだのは歴史小説だった。


著者はシルクロードや中国の歴史に関心があったらしい。
中国西北部を舞台にした歴史小説は西域もの(さいいきもの)と呼ばれ
短編集楼蘭(ろうらん)」や長編の敦煌(とんこう)」がある。
また中国と日本との関わりを描いた作品がいくつかあるが
その代表作である天平の甍」は中学時代に読んでいる。


敦煌(とんこう)」
北宋の頃、異民族の侵入から漢民族の文化を守ろうとした主人公が
仏典4万点を寺院の石窟に封じこめてしまう。
完全なフィクションであるが、似たようなことがあったのかも知れない。
最初のうちは、読んでいても、敦煌との関連は全くない。
最後近くになり敦煌が急に出てきた気がする。
でも印象に残る作品だった。


「風涛(ふうとう)」
元(げん)の世祖フビライが日本を侵略しようとした、いわゆる「元寇の役」のいきさつを描いたもの。
暴風雨の為、元軍が撤退したことは良く知られているが
船が急造のため脆弱(手抜き?)であったことなどが
元寇が失敗した大きな理由であることを知った。
ちなみに博多湾の海岸線には防塁跡(ぼうるいあと)があるし、福岡県庁のある東公園には
元軍の退散を願った亀山上皇日蓮上人(にちれんしょうにん)像がある。
福岡市東区にある筥崎宮(はこざきぐう)の楼門には「敵国降伏」の額がかかっている。
福岡市は元寇と縁が深いのである。


蒼き狼(あおきおおかみ)」
同じく元の太祖チンギス・ハーンの生涯を描いた作品。
彼はモンゴル族をまとめ世界帝国の基を作った。
降伏しない敵国民は皆殺ししているし、ミントは好きではないが
モンゴルでは今でも英雄である。
チャーチルの言葉だったと思うが
「英雄とは偉大な時代における偉大な国の偉大な人物のこと」だそうな。


思えばこれらの作品は、歴史小説に関心が深まるきっかけになったようです。
井上靖のほかの作品を改めて読みたくなりました。


                              その10へ続く



黒髪山雌岩からの眺め