*ミントの街ある記その19[第289歩・曇]

福岡市中央区の平尾山荘(ひらおさんそう)を散歩しました。


ミントの街ある記(その19)



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平尾山荘は、幕末に活躍した野村望東尼(のむらもとに、1806−1867)
晩年をすごした別荘です。
望東尼は女流歌人でしたが、勤皇家でもありました。


望東尼は、高杉晋作らの勤皇の志士をここにかくまったのです。
彼女はそのため、福岡県西部の姫島に流されましたが
のちに高杉らに救出されています。


平尾山荘。
1909年(明治42年)に復元され
1955年(昭和30年)以降、改修工事がなされています。


今日は紅白の梅がきれいに咲いていました。



***最近読んだ本***


「海と毒薬」(遠藤周作
太平洋戦争末期に九州大学病院で実際にあった、米兵捕虜生体解剖事件をモデルにしている。
これは、軍の命令にそむくこともせず、医師たちが8人の捕虜の命を奪ってしまった事件だ。
『クリスチャンならぬ日本人は、究極の場面で、罪の意識を持つものだろうか?』
これがこの作品のテーマのようだ。
もちろん、生体解剖などというものが許されるはずはない。
問題は、フィクションかもしれないが、登場する一部の医師が
生体解剖を『単なる実験手術』ととらえている点、これは非常に恐ろしいと感じた。
また捕虜たちは、東京を無差別爆撃したB29の搭乗員だった。
医師たちを擁護するわけではないが
捕虜は死んで当然、という風潮が当時はあったのかもしれない。
なぜタイトルが「海と毒薬」なのだろう?
「海」は「良心の空白」を、
「毒薬」は「良心を麻痺させるもの」を象徴しているような気がしてならない。


「沈黙」(遠藤周作
キリシタン迫害が相次ぐ、1630年代後半の日本が舞台である。
信徒のために、日本に潜入したポルトガルの司祭ロドリゴは、背教を迫られる。
自分や信徒達に加えられる拷問に対しても、神はただ「沈黙」を通すのみである。
「神の沈黙」は「神は存在するのか?」という宗教上の根源的な問いかけにつながる。
このテーマに正面から向かい合った作品だと感じた。
次に
民衆に強く根ざした教えほど、迫害をうけるときは激しく厳しいものだ、と改めて思った。
日本におけるキリシタン迫害は悲惨な歴史だが
現在でも、世界中で宗教上の争いが絶えないことを考えると
人間はちっとも進歩していないんだな、と思う。


久しぶりに重厚な作品を読みました。
肉まんさん。感想は以上です。