*ミントの読書歴その37[第150歩・雨]

冬は乾燥して空気中の水分が少なくなるため、
本来は空気が澄んで見通しが良いはずです。
でも今年はどこかの国から黄砂や汚染物質が飛んできて
霞んでいることが多いようです。
責任者出てこーい、と言いたいです。


ミントの読書歴(その37)


福井晴敏(ふくいはるとし、1968-)について


この作家、若いのに戦争を描くのが巧みである。
特に爆発シーンの描写は息をのむほど。
兵器や装備についても相当詳しいようだ。


「川の深さは」でデビューした際大沢在昌氏に絶賛されたらしい。
前にも触れた作家だが、以下の3作品を改めてコメントする。


亡国のイージス」(1999年)
最新のシステム護衛艦いそかぜ」が暴走を始める。
日本国家はなす術もなく立ち尽くすのみ。
国家とは何かを問い直す作品。
防衛庁情報局(ダイス)が作品に登場する。
これは架空の組織だが、彼の他の作品にも出てくる。


終戦のローレライ」(2002年)
昭和20年夏、滅亡間近の日本海軍に、ナチスドイツからもたらされた潜水艦と
秘密兵器ローレライが、国家の運命をねじ曲げてゆく。
戦闘シーンが圧巻。
島崎藤村作詞の歌「椰子の実」が作品全体に詩情を与えている。
感動の作品です。
2005年「ローレライ」として映画化されている。


「OPローズダスト」(2006年)
テロ組織が臨海副都心を破壊する。
息詰まるアクションシーンの連続。
東京の地理に詳しい人はさらに興味深いだろうと思う。
基本的にアクション小説であるが
危機感の無い平和ボケした日本人に喝!
といったメッセージがあるように感じる。


彼の作品の主人公は、少し疲れた中年のおじさんと
傷ついた青年の組み合わせが多いようです。
この作家、眼が離せません。



              その38へ続く


**最近読んだ本**


「ブレイン・ヴァレー BRAIN VALLEY」(瀬名秀明、1997年)
人間の脳を扱ったSFホラー。
読んで退屈はしないが難解。
あえて言えば「パラサイト・イブ」のほうが面白かった。


「コイン・トス」(幸田真音、2004年)
「eの悲劇」の続編。
主人公は同じであるが、前作と異なり
米国の9・11テロを背景にした大人の恋の物語。
結末に余韻を残す。


「UFO大通り」(島田荘司、2006年)
内容は「UFO大通り」と「傘を折る女」の2つの中篇小説。
2つの難事件に若き御手洗と石岡のコンビが挑む。
この作家、いつ読んでもトリックに驚かされる。


可也山山頂