*ミントの人物伝その15[第184歩・曇]


今回採りあげる人物は非常に有名なこの人です。


ミントの人物伝(その15)
マリア・フォン・トラップ(1905-1987)
オーストリア出身。
トラップファミリー合唱団を結成する。


子供のうちに両親を失くしたマリアは全寮制の学校に入る。
音楽が好きだった彼女はオーストリアの民謡を習ったという。


1925年
20歳のマリアはザルツブルクのノンベルク修道院に志願者として入る。
しかしなじめずに体調を崩してしまう。
1926年
院長のすすめで、娘の家庭教師を探していたトラップ家に住み込みで
働くことになる。


ゲオルク・フォン・トラップ男爵は、元オーストリアの海軍将校で
4年前に妻を亡くしていた。彼には前妻との間に7人の子供がいた。
マリアはすぐに、音楽が好きだった子供達と心を通わせるようになる。
やがて父親のゲオルク・トラップと恋愛関係になり
1927年、結婚する。ゲオルク47歳。マリア22歳。
二人の間にも一男二女が生まれ総勢12名の大家族となる。


1933年、金融恐慌による銀行倒産で一家は財産を失う。
意気消沈するゲオルクにマリアは
「歌を各地の催しで披露して収入にしてゆきましょう」
と提案した。
この一言がなければのちのトラップファミリー合唱団はなかっただろう。


1935年、フランツ・ヴァスナー神父が兄弟姉妹の歌の指導・編曲を手がけるようになると
見事、ザルツブルク音楽祭の大衆歌手コンテストで優勝してしまう。
翌年、「トラップファミリー聖歌隊が誕生し、家族でヨーロッパを公演旅行することになる。


ところがこの頃から戦争の暗い影が差してくる。
1938年、オーストリアナチスドイツに併合されてしまう。
その頃、合唱団がアメリカのエージェントから公演依頼を受けていたこともあり
家族で祖国を離れ、亡命することを決意する。
ヒトラーの誕生日に歌えと命令されて拒否したのが直接のきっかけらしい。
アメリカへ渡り、ヨーロッパに一旦戻ったあと
1939年、再びアメリカへと移住する。


1940年、プロダクションのすすめで、合唱団の名前を「トラップファミリー合唱団」と改名し
曲目をフォークソング中心に変え、アメリカ中を公演すると大きな評判になった。
戦争が終わって、ようやく公演活動も軌道に乗った頃だった。
1947年、家族の公演活動を裏方として支えたゲオルクが死去してしまう。
悲しみにくれながらも活動を続け
1948年、ついにアメリカの市民権を得る。


この頃からマリアは家族の歴史をつづった本を出版する。
1949年「トラップファミリー合唱団物語」
1950年「トラップファミリーのクリスマスソング」
1952年「昨日も今日も永遠に」
1955年「トラップ一家の一年」
いずれもベストセラーとなった。


1956年、トラップファミリー合唱団は解散する。
ゲオルクのいない合唱団をひきいて9年、マリアは疲れていたかも知れない。


1956年、「トラップファミリー合唱団物語」をもとにした映画菩提樹がドイツで上映される。
1958年には「続・菩提樹も上映される。
さらにはアメリカのプロダクションが映画化権を買い取り
ミュージカルを作ろうと考えるようになる。


1965年、20世紀フォックス映画サウンド・オブ・ミュージックが上映される。
監督はロバート・ワイズ
主演はジュリー・アンドリュース
音楽はリチャード・ロジャース、オスカー・ハマースタイン2世の黄金コンビだった。
この映画は空前の大ヒットをした。
アメリカ国内だけで7900万ドルの興行収入を挙げ、
20世紀フォックス映画は、大作「クレオパトラ」の失敗による経営危機から立ち直ったといわれる。


マリアや家族は、映画におけるゲオルクの人物像が現実と違うとして不満だったらしい。
映画ではクリストファー・プラマーが厳格な父親を演じていたが
実際にはゲオルクは、勝気なマリアのなだめ役であり、また家族のまとめ役だったという。
本当は優しい父親だったのだ。

マリアがいて、ゲオルクがいたからこそ合唱団は成功したといえる。


映画ではマリアを中心に、家族がオーストリアを脱出するまでを描いていた。
しかしアメリカで合唱団が認められるまでのサクセスストーリーも興味深い。


一家がコンサート活動を終えると
マリアは、バーモント州ストウに「トラップ・ファミリー・ロッジ」を開き
自給自足をしながら、各地で講演活動を行なった。


1987年、マリア死去。享年82歳。
映画と同様に激動の人生を送った彼女は
ゲオルクらと共にロッジの一角の墓地に眠っている。


(参考文献)
 Wikipedia
  Web 他
 写真はWebから借用しました。


***最近読んだ本***


「大盗禅師」(司馬遼太郎
司馬遼太郎が全集への収録を拒んだ作品らしい。
この作品はまだ読んでいなかった。
江戸時代初期の慶安事件(由井正雪の乱)を描く。
明の復興をめざす鄭成功(ていせいこう)も登場する。
多分にフィクションを交えた幻想小説であるが
個人的には「韃靼疾風録」のほうが面白いと思う。


九千部山(写真はマロンさんから借用しました)